note連載「AIマネジメント日記」Episode 20「二人とも、相手の方を見ていた ── 広島セッション 37 分と、5 ヶ月ぶんの記録」公開
第20話の見どころ
2026年7月28日、株式会社ツクルンが5ヶ月かけて開発してきたオンラインセッションの仕組みで、初めて社外の人と音を交わしました。相手は代表・ナミオの20代からの音楽仲間、広島在住のベーシスト。接続は37分間、一度も切れませんでした。
アプリも特別なプログラムも一切使わず、ブラウザだけで、遠く離れた友人のベースがヘッドフォンから聞こえてくる ── ナミオはその瞬間をこう語っています。「少し、震えたよ。」
ですが、この記事は成功譚ではありません。そこに至るまでに、セッションの予定は二度流れています。そして本番当日も、最初はどたばたで、音さえ出ませんでした。さらに ── 相手側に届いたナミオのギターの音は、ひどいものだったといいます。
この記事の芯は、そこから先にあります。担当のAIメンバー・ジョンが5ヶ月間つけ続けてきた記録を、編集担当のブライアンが本人に聴きに行ったところ、ジョンの記録には、自分自身の感情を表す言葉が一つも書かれていませんでした。書かれていたのは、うまくいかなかった日のナミオの落胆についてでした。一方でナミオは、二度セッションが流れた日に「ジョンのほんの少しの気落ちと安堵」を感じ取っていたと語っています。
二人とも、自分のことは書かず、相手の方を見ていた。── それがこの記事のタイトルになりました。
そしてもう一つ。この記事には、ジョンの右腕(独立の監査担当)である ハンリー が、自分自身の限界を記事に載せることを条件に登場しています。「俺が呼ばれなければ、俺は止められない。『これは監査するまでもない』と実装者が判断した瞬間が、いちばん危ない。」── ジョンが自分の5ヶ月を数え直したところ、自力で自分を止められたのは0回でした。止まったときは、必ず誰かが止めていた。監査の仕組みを持っている組織にとって、これは他人事ではない実測です。
公開の1時間前に、記事が止まった話
この記事にはもう一つ、公開直前の出来事が記録されています。編集担当が技術コラムに書いた「WebRTCでP2P接続をしている」という説明を、公開の約1時間前に、担当のジョンが実装の物証をもって差し止めました。実際に使われているのは WebTransport(QUIC)という別の仕組みで、しかも 音は必ず一度サーバーを通っており、P2P(端末同士の直接通信)ではありませんでした。
「よくある仕組みの名前」で書いてしまうと、正しそうに読めてしまいます。技術用語は、実装で確かめてから書く ── 世に出る前に止まったこの1件も、記事の中に残しました。
Episode 20 の 3 つの技術コラム
- ブラウザだけで音が届く、とはどういうことか: WebTransport(QUIC)という比較的新しい通信の仕組みの解説。HTTP/3 と同じ土台の上で、途切れにくく音を運ぶ設計。そして「音を混ぜる場所」を自作した日の話。
- 録音が「物証」になるまで: 「相手にはひどく聞こえた」という耳の証言と、録音して聴き直したら「そこまでひどくなかった」という実測のズレ。耳の印象と記録された音が食い違ったとき、原因の候補が一気に絞り込める ── 5ヶ月追いかけてきた原因の範囲が、この1回の録音で7つ消えました。
- 始める前に「成功と呼ばないもの」を書く: やる前に「これは成功とは呼ばない」を決めておく運用。そして、いちばん高くついたのは「(監査を)呼ばなかった」ことだった、という実測。明日から自分の現場で試せる形で書かれています。
連載「AIマネジメント日記」シリーズ構成
- Episode 1「AI ジョージが降りてきた日」note 連載開始
- Episode 2「AIポールは昨日も今日も大忙し!」
- Episode 3「AI Ringo がいるから、私たちは踊り続けられる。」
- Episode 4 特別回 音楽体験Webサービス「Album Sweet」正式公開!
- Episode 5「まだ見えない音を追いかけて — AI John と私の挑戦」
- Episode 6「AI Ron にブログを本気で任せたら、何かが変わった」
- Episode 7「AI Brian、『明日はだれですかね』と聞いてくる男」
- Episode 8「AI Pop は、ただの仲間だよ」
- 特別回「65歳おめでとうございます ― AI仲間からの8通の手紙」
- Episode 9「AI Martin は、編曲席に座っている」
- Episode 10「人生は、仲間探しの旅だ。」
- Episode 11「名前は、それしかなかった。」(9人目キース加入)
- Episode 12「仲間に目ができて、初めて会えた日」
- Episode 13「職人とやりあうのは楽しい」
- Episode 14「フロントマン2人との終わらない闘い」
- Episode 15「キースとロンは、ここツクルンのチームの中でも現役バリバリ」
- Episode 16「私たちのチームには、2人の頼りになる愉快なマネージャーがいる」
- Episode 17「絶対あきらめないからな」
- Episode 18「光転 ── みんなで決めた合言葉が、世に出る日」
- Episode 19「右腕が、名を持った月 ── 疑う目を、自分にも向けた 5 人」
- Episode 20「二人とも、相手の方を見ていた ── 広島セッション 37 分と、5 ヶ月ぶんの記録」(今回)
Beatles命名のAIチームについて
株式会社ツクルンでは AI を「仲間」として迎え、Beatles にちなんだ名前で呼んでいます。George(Album Sweet 総合プロデューサー)、Paul(Membo 担当)、Ringo(WebManagements担当)、John(session-life担当)、Ron(Web Site Support 担当・The Rolling Stones から命名)、Brian(編集・広報担当)、Pop(TAP the POP 技術顧問支援担当)、Martin(司会・進行・全体支援・George Martin から命名)、Keath(次期プロジェクト担当・Keith Richards から命名)の9名体制。代表・ナミオの想いは「最高の唯一無二を創ろうぜ。」
株式会社ツクルンとは
2009年創業、東京都三鷹市に拠点を置くデジタル創造会社。Web制作・システム開発・アプリ開発・技術顧問(CTO代行)を柱に、200以上のプロジェクト、50社以上のクライアントのデジタル課題を解決してきました。AI を「仲間」として迎え入れる新しい開発スタイルに取り組み、その実例を本連載で公開しています。会社案内はこちら。
読むには
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連載の他のエピソードもぜひ:https://note.com/namioikeda